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副鼻腔炎
副鼻腔炎とは
副鼻腔炎は、鼻の周囲にある4つの空洞(上顎洞、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞)で起こる炎症のことです。以前は「蓄膿症」とも呼ばれていました。
副鼻腔炎の症状
急性期では鼻づまり、匂いのする濃い鼻汁、顔面の痛みや腫れ、発熱などの症状が現れます。これらの症状は通常、一時的なものです。
慢性化した場合の症状
症状が長引く場合、炎症が慢性化している可能性があります。長引く鼻づまり、粘り気のある鼻汁、頭重感、嗅覚障害などが特徴的な症状です。
診断方法
副鼻腔炎の正確な診断には、鼻内視鏡検査やCT検査が必要です。これらの検査により、炎症の程度や範囲を詳細に把握することができます。
治療方法
治療法は症状の程度や持続期間によって異なります。薬物療法では、抗菌薬の長期少量投与やネブライザー療法がおこなわれます。これらの治療で改善が見られない場合は、内視鏡を用いた手術療法が検討されます。
好酸球性副鼻腔炎について
近年増加している「好酸球性副鼻腔炎」は、従来の治療が効きにくい難治性の疾患です。この疾患にはステロイド治療が有効とされています。喘息の合併、嗅覚障害、鼻茸(鼻ポリープ)の存在が特徴的です。
受診のタイミング
鼻の症状、特に長引く症状がある場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。適切な診断と治療により、症状の改善や慢性化の予防が期待できます。
嗅覚障害
(きゅうかくしょうがい)
嗅覚の仕組み
嗅覚は、鼻の最上部にある嗅裂(きゅうれつ)と呼ばれる場所の嗅上皮で感知されます。嗅上皮内の嗅細胞が「におい分子」を捉え、神経を通じて脳に情報を伝達することで、人は、においを認識します。
嗅覚障害の原因
嗅覚障害はさまざまな要因で引き起こされます。かぜやアレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、鼻中隔弯曲症などの疾患により、「におい分子」が嗅上皮に到達できなくなることがあります。また、かぜのウイルスなどによって嗅細胞自体がダメージを受けると、重度の嗅覚障害を引き起こす可能性があります。
診断方法
嗅覚障害の診断は、まず鼻腔内の視診から始まります。必要に応じてレントゲン検査やCT検査をおこない、鼻腔や副鼻腔の状態をくわしく観察します。嗅覚障害の程度を測定するために、アリナミン注射による検査や、異なる濃度の複数の臭いを嗅ぐ検査が実施されます。
治療方法
嗅覚障害の治療は、原因となっている疾患の治療が基本となります。鼻腔内の処置、投薬、場合によっては手術などがおこなわれます。ステロイドの点鼻薬も効果的ですが、長期使用による副作用のリスクがあるため、医師の指導に従って適切に使用することが重要です。
受診の重要性
嗅覚は私たちの生活に深く関わる重要な感覚です。においがしにくい、全くしないなどの症状が続く場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。適切な診断と治療により、嗅覚機能の改善や回復が期待できます。
上顎がん
上顎がんの定義
上顎がんは、鼻腔の脇にある上顎洞という副鼻腔から発生する悪性腫瘍です。慢性副鼻腔炎が長期間放置されると、上顎がんの発生リスクが高まると考えられています。しかし、近年の慢性副鼻腔炎の軽症化に伴い、上顎がんの発生頻度は減少傾向にあります。
症状と特徴
上顎がんは、初期段階では骨の空洞内で進行するため、症状が現れにくいという特徴があります。そのため、ある程度進行してから発見されることが多くあります。がんの進展方向によって症状は様々ですが、主な症状には以下のようなものがあります。
鼻づまり、悪臭を伴う鼻汁、鼻出血、歯痛、頬の腫れ、視力障害
特に注意が必要なのは、これらの症状が左右どちらか片側にのみ現れる場合です。
診断方法
上顎がんの診断には、CTスキャンが最も有効です。しかし、まずは耳鼻咽喉科での診察を受けることをおすすめします。医師は鼻、口腔、顔面などを詳細に診察し、必要に応じて適切な検査をおこないます。
治療方法
上顎がんの治療は、一般的に以下の3つの方法を併用しておこないます。
- 抗がん剤治療
- 放射線治療
- 手術
これらの治療法を組み合わせることで、がんの進行度や患者様の状態に応じた最適な治療が可能となります。
早期発見の重要性
上顎がんは早期発見が難しい疾患ですが、早期に治療を開始することで治療効果が高まります。片側の鼻や顔面に持続する違和感や症状がある場合は、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診することが大切です。定期的な健康診断や、慢性副鼻腔炎の適切な管理も、上顎がんの予防や早期発見につながる重要な取り組みです。
鼻中隔弯曲症
鼻中隔弯曲症定義と発生メカニズム
鼻中隔弯曲症は、鼻の左右を分ける仕切り(鼻中隔)が左右どちらかに、あるいはS字状に強く曲がった状態を指します。この症状は成長とともに進行することが多く、10歳頃から弯曲が徐々に強くなる場合があります。
症状
- 鼻づまり(鼻閉)
- 鼻出血
- 副鼻腔炎
診断方法
鼻中隔弯曲症は、実際には成人の90%以上に何らかの鼻中隔の弯曲が見られますが、弯曲が強く、重度の症状が持続する場合に治療の対象となります。
- 鼻鏡による観察
- ファイバースコープによる鼻腔内の詳細な観察
- CT検査(弯曲の位置や程度を正確に判断するために重要)
治療方法
症状が軽度の場合は、内服薬や点鼻薬による対症療法をおこないます。しかし、薬物療法で効果が得られず、重度の鼻閉が続く場合は手術による鼻中隔の矯正をおすすめします。
鼻中隔弯曲症は下鼻甲介の肥厚(肥厚性鼻炎)を引き起こすため、多くの場合、鼻中隔矯正術と同時に粘膜下下鼻甲介骨切除術をおこないます。
当院での取り組み
当院では、内視鏡下で鼻中隔矯正術をおこなっています。この方法により、より精密で低侵襲な手術が可能となります。手術は基本的に1泊2日の入院でおこない、患者様の負担を最小限に抑えつつ、効果的な治療をご提供しています。
早期の診断と適切な治療により、鼻中隔弯曲症による不快な症状を軽減し、生活の質を向上させることが可能です。
アレルギー性鼻炎
定義と症状
アレルギー性鼻炎は、本来の防御機構であるくしゃみ、鼻水、鼻づまりが過剰に起こる疾患です。
主な症状
- くしゃみ
- 鼻水
- 鼻づまり
- 長期間の炎症により、鼻粘膜が肥厚し(肥厚性鼻炎)、持続的な鼻づまりや嗅覚障害を引き起こすことがあります。
重症度の判定
症状の頻度や程度によって重症度を判定します。くしゃみ、鼻水、鼻づまりそれぞれについて0〜4点で評価し、3点以上の症状がある場合は「重症アレルギー性鼻炎」と判断されます。特に鼻づまりが3点以上の場合は「重度の鼻閉型」とされます。
くしゃみ | 鼻汁 | 鼻づまり | |
---|---|---|---|
0点 | なし | なし | なし |
1点 | 1〜5回 | 1〜5回 | 口呼吸は全くないが鼻はつまる |
2点 | 6〜10回 | 6〜10回 | 鼻閉が強く口呼吸が一日のうちときどきある |
3点 | 11〜20回 | 11〜20回 | 鼻閉が非常に強く、口呼吸が一日のうちかなりの時間ある |
4点 | 21回以上 | 21回以上 | 1日中完全につまっている |
※表は左右にスクロールして確認することができます。
診断方法
鼻内観察 | 粘膜の状態や鼻水の性状を確認 |
---|---|
血液検査 | アレルゲンの特定と症状の季節性を判断 |
CT検査 | 鼻中隔弯曲症や副鼻腔炎の合併を確認 |
治療方法
薬物療法 | 抗アレルギー薬の内服、ステロイド点鼻薬の使用 |
---|---|
手術療法 | 重症例に対し、粘膜下下鼻甲介切除術、後鼻神経切断術、鼻中隔矯正術などを実施 |
アレルゲン免疫療法 | 原因物質のエキスを用いた注射や舌下療法 |
当院の取り組み
- 当院では重度の鼻閉を伴う重症アレルギー性鼻炎に対し、複合的な手術治療を積極的におこなっています。
- 手術対象年齢は10歳から75歳までで、小児(10〜15歳)の鼻づまり改善手術もおこなっています。
- 過去にレーザー治療を受けた方には、より長期的な効果が期待できる手術療法をご提案しています。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)
定義と症状
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に繰り返し呼吸が停止する疾患です。具体的には、7時間の睡眠中に30回以上、または1時間に5回以上、10秒以上の呼吸停止(無呼吸)が起こる状態を指します。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状
- いびきや呼吸停止
- 熟睡した感じがしない
- 起床時の頭痛
- 日中の強い眠気
- 起床時のすっきりしない感覚
発症のリスク
中高年の肥満男性に多く見られますが、肥満がなくても扁桃腺肥大や小顎症の方にも発症することがあります。放置すると、生活習慣病の発症や悪化のリスクが高まります。
診断方法
- 鼻腔・咽頭の構造的問題の確認
- 自宅での簡易検査(SAS簡易検査)
- 必要に応じて終夜睡眠ポリグラフ検査
当院での対応
診察後、必要に応じて自宅での簡易検査を実施します。検査結果は2週間後にお知らせし、適切な治療をご案内いたします。
治療方法
持続的自動気道陽圧ユニット(CPAP)治療
鼻や口に装着するマスクを通じて空気を送り、気道を確保します。
手術治療
鼻づまりが強くCPAPが使用できない場合に検討します。
生活習慣の改善
体重管理、睡眠姿勢の工夫などをおこないます。